環境メッセージ

館長からのメッセージ

アクアマリンふくしま
館長 安部義孝

阿武隈の方舟 よみがえれカエルの歌

阿武隈 “両生類の方舟”
阿武隈 “両生類の方舟”

いまなぜカエルなのか。
田植え時に耳を聾するほどだったカエルの合唱が、ここいわき市の阿武隈の中山間地でもトーンダウンしている。車にひかれ道路に平になって干からびたカエルさえ目にすることが少なくなった。ヒキガエルは道路の側溝に落ちて出られなくなって死亡する。田の畦を歩くと、オタマジャクシやドジョウが水紋をつくったものだが、それらももはや見られない。タニシもいない。ヘビもあまり見なくなった。

水辺で生活する小動物が激減している。
水辺から離れられない6000種の両生類は、その1/2が過去20年に新種として記載されたものだ。しかし、これは絶滅の危機意識から調査が始められた結果であり、絶滅のスピードの方が新種発見を上回っているという。その原因は気候変動、病気、外来生物などさまざまであるが、水辺の環境悪化による生息地の減少が主因であることは確かだ。
これを重大視した国連の世界自然保護連合、種保存委員会は世界動物園水族館協会は、保全生物学専門家グループとともに、「両生類の箱舟」委員会を立ち上げた。
動物園水族館の持っている飼育繁殖技術を生かして世界の両生類の危機を救うために「両生類の方舟」キャンペーンを展開した。 日本動物園水族館協会はこれに呼応し、会員の動物園水族館に「両生類の方舟2008カエル年」をテーマにした企画の実施を呼びかけた。このキャンペーンは、カエルを通して身近な自然環境を見直す契機になった。

カエル展風景
ビオトープ“BIO BIOかっぱの里”でのカエル展風景

環境水族館宣言もしているアクアマリンふくしまは、「よみがえれカエルの歌」のタイトルでいくつかの企画展によってカエルの保全を訴えた。
屋外のビオトープ、ビオビオ河童の里では、春から夏にかけて、実際のカエルのコーラスを背景に、人々は、生きたカエルの観察し、戸外の「カエルミニ博物館」で地元「ふくしまのカエルたち」を学び、あわせて阿武隈出身の「カエルの詩人」草野心平の蛙の詩を楽しんだ。
子どももまた、さまざまなカエルの不思議を、観るだけでなく体感し、興味を深めた。

写真集”
写真集

館内では写真展を開催、中南米のコスタリカ大学で昆虫分類学を専攻する友人の西田賢司さんと、その友人の保全生物学者、ピオット・ナスクレンスキーさんの協力によって、コスタリカを中心とした世界のカエル写真展が実現した。
コスタリカは「豊かな海岸」の意味だ。日本と同じ戦争放棄の憲法を持つ数少ない国の一つだ。

イチゴヤドクガエル”
イチゴヤドクガエル

コスタリカは、熱帯雨林帯にあるが、 3000メートル級の北米と南米をつなぐ脊梁山脈の活火山もあり、変化にとんだ地形と環境は多様な生物を育む。特にヤドクガエルなど極彩色のカエルの仲間が数多く生息している。
今、このカエルたちに「ツボカビ病」が蔓延し、絶滅が危惧されている。

福島県、阿武隈山地は南北150q、東西45q、広大な山波には豊かな低山の連なる自然度の高い中山間地であり、ちょうど方舟のような形をしている。
方舟の中央部の川内村には、モリアオガエルの産卵場所として保護されてる平伏沼がある。
私たちは、最近、「弁財天うなぎプロジェクト」という長期域内保全プログラムを立ち上げた。「弁財天」とは水の神様である。阿武隈の「方舟」の端に位置する弁財天賢沼寺(けんしょうじ)の賢沼(かしこぬま)のオオウナギは国の天然記念物にもなっているが、今はその姿はない。ウナギの回遊路が遮断されたためだ。弁財天を水辺の生物の保全プログラムのシンボルにした。私たちは、何も武器を持たない、水辺から離れられないカエルたちの水辺の自然回復のために貢献することを決意している。

アクアマリンふくしま 館長 安部義孝

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